歌人・国文学者。正三位。勲六等。文学博士。日本学士院会員。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。一時は桂園派に連なる歌を詠んだが、和歌改良の風潮に接して革新の気風を抱き、1897年頃から独自の歌境をうち立て、有望な新星として注目された。「ひろく、ふかく、おのがじし」をモットーとし、新詩社系、根岸短歌系双方との交流を深めた。国文学者としての実績も豊富で、特に『万葉集』の研究で有名。
【壺中日月長】
「壺中」というのは、壺の中の世界のことで、ごく限られた小さな世界のこと。それはまた、別天地、仙境のこと。「日月長」とは、非常に穏やかな、のんびりとした時間がいつまでも流れているということで、この句は、「壺のように小さな世界でも、平和に日が送ることができる」という意味。
『後漢書』には、費長房(ひちょうぼう)という人が、壺公(ここう)と呼ばれた薬売りの老人の持つ壺の中に入り込んだ所、中には立派な宮殿があり、費長房はそこで、様々な歓待を受けて戻って来ました。わずか十日ほどだと思っていたのが、実は十数年経っていた、という物語が紹介されている。(浦島太郎のような話)
それが「壺中日月長」のこと。この「壺中」は必ずしも空間的な意味ではなく、時空を超越した心の別天地を指す。