ぼくは物覚えが悪い:健忘症患者H・Mの生涯


1953年、てんかん治療のための脳手術から目覚めた27歳のヘンリー・モレゾンは、別の深刻な障害を負っていた
――手術後に新しく経験した出来事をなにひとつ記憶できなかったのだ。
こうして重度の健忘症患者となったヘンリーは、永遠に「現在」のなかに閉じ込められてしまった。

しかしだれが予測しただろう。やがてあまたの医師がこの不幸な、しかし精神医学史上に珍しい患者に注目し、
彼の脳とその症例があらゆる方向から精査され、ひとつの医科学分野を根底から刷新することになろうとは。
 2008年に世界中の研究者に悼まれつつ亡くなったH・Mことヘンリー・モレゾンの数奇な生涯と、それと表裏一体である
記憶の科学の発展史を、研究者として彼に40年以上寄り添った神経科学者自身が余すところなく描いた、驚きと感動の実録。

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