●中央公論社 昭和53年9月20日再版発行
●サイズ: -判/ページ数288P /高さ 18cm /(g)
●定価:1500円(税抜き)
●状態:経年劣化、シミ多数
・表紙の痛み:シミ・痛み有り、カバーなし
・シール:図書館除籍本
・大きなページの折れ:なし
・書き込み:なし
・読むのに支障のあるような染み、汚れ:なし
・水濡れのあと:なし
●内容:Hatena Blog からの転載
バシュラールの科学哲学において重要なのは、「プロセス」の重視にあるように思う。たとえばバシュラールは、科学の客観性を「客観化」と捉え直す(ほかにも、「単純なもの」を「単純化されたもの」と捉え直したりもする)。証明の手続きは、客観性に到達するためのたんなる手段というよりむしろ、それ自体が客観性であるような客観化のプロセスである。明晰であるべきなのは、結果ではなく、そこに至るまでの道筋である。とすると、科学を、その諸々の操作を捨象して考えることはできない。バシュラールがつねに個別的な議論の道筋を丁寧に辿るのも、その道筋こそが科学そのものにほかならないからだろう。 また、そのプロセスがつねに相補的な往復運動によって進行していく、とする点もバシュラールの科学哲学の特徴だろう。推論と実験との絶えざる往復。適用のプロセス。この相補性という発想は〈非〉をめぐる考察にも見いだされる。ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学、ニュートン力学と非ニュートン力学、……、デカルト的認識論と非デカルト的認識論。後者は前者を否定するものではなく、むしろ前者を拡張し、補完するものである。後者に付く接頭辞〈非〉は、否定ではなく、むしろ前者の限界を指し示すことで前者を拡張し、補完し、完成させることをあらわしている。パラダイムは転換するのではなく、過去の限界を顕わにしつつ拡張する。断絶でもなく、といって連続でもなく、弁証法的とも言い切れない、相補性。
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