◎【除籍本】批判理論と社会システム 上・下


【除籍本】批判理論と社会システム理論 ハーバーマス=ルーマン論争 上・下
木鐸社  1987.8.25第二刷、1987.4.25第一刷発行
●サイズ: B6判/ページ数538P /高さ 19.5cm   /(800g)
●定価:20003000(税抜き)
●状態:並 天シミ多数
・表紙の痛み:特になし
・シール:図書館除籍本
・大きなページの折れ:なし
・書き込み:表紙等に書き込みあり
・読むのに支障のあるような染み、汚れ:なし
・水濡れのあと:なし
●内容:Hatena Blog からの転載
 
“THEORIE DER GESELLSCHAFT ODER SOZIALTECHNOLOGIE”
 1971
 Jurgen Habermas / Niklas Luhman
 ASIN:4833202042
 
 むずかしい...。ルーマンの最初のふたつの論文はまだわかりやすかったが。ハーバーマスの論理展開が慣れないし、さらに相互の応答となると...。
 
 
[メモ]
1..
 この論争によって、ルーマン=既存のシステムの維持に寄与するテクノクラートのイデオロギー、というレッテルが貼られた。「いかなる言説にも、イデオロギー的に利用されえない担保などない」というルーマンの反論がしっかり載っているにもかかわらず。(ある理論が政治的にどう使われるかは、政治システムで決定されることであって、その理論そのものに備わった性質のためではない。)
 
2..
 両者は共に社会学の基礎概念として〈意味〉を位置付けるが、その捉え方にまず顕著な違いが表れる。
 ハーバーマスは〈意味〉に先立って共有される了解事項があるとする。
 
    p150 言明の真理条件は、他のすべての人々の潜在的な同意である。
 
    p232 意味の意味はまず第一に、意味が間主観的に共有されるということ、つまり意味は発話し行為する人々の共同体にとって同一でありうる、という点に存する。
 
    p233 意味的コミュニケーションが言語以前のコミュニケーション様式に比べてきわだっている点は、それが同一の意義を媒介として了解をもたらすということにある。意義が同一であるのは、二人以上の言語能力と行為能力をそなえた話し手が、様々に異なる状況で使われる一つの表現(記号)に同じ意味を結びつけるときであり、かつそのときにかぎられる。
 
 一方ルーマンは、意味を機能的に捉えようとする。
 
    p42 意味的体験処理は複雑性の縮減と保存を行う。しかも直接に与えられた明白な体験に他の可能性への参照や再帰的な一般化的な否定の潜在能力を混ぜあわせ、そのようにしてリスクのある選択にたいして備えるという仕方で。
 
    p71 意味の機能は、他の可能性の指示と他の可能性への接近の制御である。
 
    p74 意味は抽象的性質の理念的存在において構成されるのではなく、むしろこのような規則の生活実践上での使用において、即ち実際の意識生活の遂行においてはじめて構成されるのである。意味は諸前提が作動することである。
 
 ルーマンの場合、意味に先行する合意事項等が必要とされない。これは[条件プログラム]的な考え方。
 ルーマンは機能主義的観察を徹底しており、ものごとの背後に本質だとか真理だとかを据え付けない。そもそも〈真理〉という概念自体もまた機能的に観察される。真理は絶対的なものではなく、コミュニケーションメディアのひとつとして機能的作動に寄与している。それ以上遡行できない原理、ではなく、暫定的な準拠点(固有値 Eingenwert)という考え方。なおルーマンが言う「機能」とは、別様である可能性の地平からの比較・選択を意味する。
 重要なのは作動のみ。事実として社会が作動しさえすれば、その背後に秩序や合意がなくてもいい。あるいは、仮のものでもいい。
 
3..
 こうしてふたりを比べてみると、たしかにルーマンは冷徹。冷徹すぎる。でも実際に複雑すぎるこの世界において、世界を観察する方法としては実効的。ルーマンに比べるとハーバーマスは理想主義的にみえる。理性による対話、って言われても素直には頷けない..。でもそこがハーバーマスの言う「実践」なのか? 少しでも現実を変えるために行動しろ、っていうような。ルーマンからすれば、間主観的な合意や協調なんてありそうもないこと、なのだけれど。
 敵か味方かの二分を迫るハーバーマスに対し、ルーマンは、あまりに混沌としすぎていてどれが味方だか敵だかわからない、っていう状況か。
 
 ルーマンによれば、ハーバーマスが過度に理想化する〈討議〉も、機能分析のもとにさらされれば、固有の働きをおこなうシステムのひとつであり、討議の参加者は討論システムに従って作動を続けているにすぎない。誰もシステム外、あるいはシステムを超越した位置に立つことなどはできない。
 しかし同時にハーバーマス側からみれば、この討論自体がハーバーマスの理想とする討議そのもの、であったりするのかも。(共通の了解に至っているわけではないけど。)
 たとえばこの書におけるハーバーマスのルーマン批判が、けっこうルーマンのその後の展開に影響を与えているような。とくに複雑性概念について。この書でもハーバーマスからの批判に応答して整理されているが、80年代に入ると、オートポイエーシス概念の導入によって、「複雑性の縮減」はあまり出てこなくなる。後期ルーマンのタームは、「区別」「観察」「再参入」などがメイン。「複雑性縮減」では、機能の言葉としては曖昧だったのかもしれない。(p389の複雑性概念の整理表も、結局よくわからなかった..。)
 
4..
 ルーマンの論理展開。
 「であるからこそ」「にもかかわらず」「なぜなら〜であり〜であり〜、等々。」「むしろ」
 などの接続詞。とくに「むしろ」は多用される。
 
5..
 p20 [機能主義] [環境世界関係] [複雑性の意味的縮減]
 p52 事象的次元/社会的次元/時間的次元
 p225 パーソンズの行為システムの基本機能(AGIL:[適応] [目標達成] [統合] [パターンの維持])
 
    「批判理論と社会システムの理論 - ハーバーマス=ルーマン論争」
     ユルゲン・ハーバーマス / ニクラス・ルーマン
     佐藤嘉一・山口節郎・藤澤賢一郎 訳
     木鐸社
 
 
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